壺齋散人の 美術批評
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微笑むサスキア:レンブラント




レンブラントはアイレンボルフの家で、一人の若い女性と出会った。サスキアといって、アイレンボルフの従妹である。彼女の親は裕福だったが、父親はすでに死んでいた。そのサスキアとレンブラントは、1633年の5月に婚約した。その婚約の前後に、彼女へのプレゼントとして描いたのが、「微笑むサスキア」と呼ばれるこの作品である。

この時サスキアは、まだ21歳の若さである。サスキアは高価そうな衣装を着て、大きな帽子をかぶり、こちら側、つまり画家のほうに、ほほえみを浮かべた顔を向けている。その表情には、気の強そうな雰囲気が見て取れる。事実サスキアは、しっかりした考え方を持った、気の強い女性だったようである。この時にサスキアは、レンブラントの名声についてある程度は知っていたようだが、自分が絵画史上に永遠に残ることになろうとまでは、思わなかったに違いない。

上体を斜めに傾けた半身像は、フランドル絵画の伝統にのっとったポーズだ。光源は右上部。そこからさした光が、サスキアの顔から胸にかけて、強い陰影を作っている。サスキアの微笑みは、なにがしら不自然で、謎のようなものを感じさせる。モナリザとはまた違った形の謎である。

なお、レンブラントとサスキアは翌1634年7月に結婚した、サスキアは巨額の持参金を持ってきた。そのことでレンブラントは経済的にも豊かになる。またサスキアの属していたサークルを通じて、絵の注文も来ることになった。レンブラントにとっては、条件のよい結婚だったわけだ。

(1633年 カンバスに油彩 52.5×44.5㎝ ドレスデン、国立美術館)




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