壺齋散人の 美術批評
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座っている浴女:ルノワールの世界





晩年のルノワールは、浴女を始め裸婦を好んで描いた。ここではそんな裸婦像のいくつかを見てみたいと思う。これは、「座っている浴女 Baigneuse assise」と題した作品。自然のなかで、自分自身の内面に沈潜しているような少女を描いている。画面に水は見えないが、おそらく沐浴中なのだろう。肌がつやつやとして、あたかも沐浴したばかりのように見える。

自分の内面に沈潜していると言ったが、この少女は、軽く閉じた目を伏し目がちに遊ばせ、何を見るでもなく、あたかも自分の内面に見入っているようである。左手を膝にあてているのは、恥じらいの感情のあらわれか。こぶりな胸が、少女のういういしさを感じさせる。モデルが誰かは明らかでない。

当然のことながら、モデルの肌は金髪ともども暖色である。それに対して背景はグリーン主体。このグリーンが明るいオレンジ系の肌の色と補色の関係にあるために、モデルは浮かび上がって見える。影を暗いブラウンで表現しているが、これが多少どぎつさを感じさせる。

(1893年 カンバスに油彩 81×65㎝ ニューヨーク、メトロポリタン美術館)




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