壺齋散人の美術批評
HOME ブログ本館 | 東京を描く 水彩画 日本の美術 プロフィール 掲示板


愛の調べ:ヴァトーのロココ世界




「愛の調べ(La gamme d'amour)」と題するこの作品は、田園を背景に人物の優雅な仕草を描くというヴァトー得意のモチーフである。木の根株に座った男がギターを弾き、その隣に女が腰を下ろして男の顔を見つめている。女は楽譜らしいものを持っているが、それは小道具としての扱いに過ぎない(あるいは男がその譜面に見入っているという解釈もある)。

男の格好はなぜか、コンメーディア・デッラルテのメズタンに似ている。このメズタンをヴァトーは以前にも複数回描いているから、よほど気に入っていたか、あるいは喜劇一座との腐れ縁があったのかもしれない。

男の背後には誰やらの胸像が垣間見え、その胸像の下には、何人かの人々がくつろいでいる。恋人らしい男女もいれば、赤ン坊も世話をする女もいる。

(1718年頃 カンバスに油彩 51×60㎝ ロンドン、ナショナル・ギャラリー)



HOME ロココ美術次へ









作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2011-2021
このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである