壺齋散人の美術批評
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追憶:フラゴナールのロココ世界




「追憶(Souvenir)」と題されたこの作品は、女性のさりげない動作をスナップショット的に捕らえたもの。モデルは、フラゴナールの妻の妹マルグリット・ジェラールと推測されている。この女性をフラゴナールは自分の秘書として使っており、淡い恋愛感情を抱いていたと言われている。この作品には、そうしたフラゴナールの感情が投影されているようである。

女性は大きな木の前に立ちずさみ、その幹になにか書きつけている。それはおそらく彼女の思い出にかかわることだろうというので、「追憶」と呼ばれるようになった。

女性の脇には、犬が椅子の上にこしかけ、女主人を見つめている。この犬がいるおかげで、絵のイメージが膨らむ。

曖昧に塗られた背景から、浮かび上がって見える女性の顔は、影につつまれている。そのために、絵の雰囲気が幻想的な趣を呈している。いかにもロココ的な雰囲気だ。

(1776年頃 カンバスに油彩 25.2×19.0㎝ ロンドン、ウォーレス・コレクション)



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