壺齋散人の 美術批評 |
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三位一体図:デューラーの木版画 |
ランダウアー祭壇画を制作した1511年に、デューラーは矢継ぎ早に木版画の絵本集を出版した。「小受難伝」、「大受難伝」、「マリアの生涯」である。これらは1505年のイタリア旅行以前から作り続けてきたものを、一時に集大成したものである。このほか1498年に出版した「ヨハネの黙示録」の再販も行った。 デューラーは、この時までにいくつかの大祭壇画を制作してきたのであったが、それらは手間がかかる割に大した収入にならないというのがデューラーの口癖だった。収入と言う点では、版画集の方がはるかに割がよかった。いまや大勢の弟子たちを抱える身分になったデューラーにとって、版画集の売り上げは、貴重な財源だったわけである。 これらの画集のための木版画のほかに、デューラーは自分の木版画技術を結集した作品を作った。「三位一体図(恩寵の座)」と題された一枚である。 構図は同年のランダウアー祭壇画の中の三位一体図とほぼ同じである。祭壇画ではイエスクリストが十字架に釘づけされているのに対して、こちらは父なる神によって抱きかかえられている。 父と子を取り囲む天使たちの表情は、この版画の方がずっと詳細で、しかも精彩に富んでいる。技術の完成度がいかに高いかは、「ヨハネの黙示録」と比較すると一目瞭然である。 (1511年、木版画、393×283cm) |
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