壺齋散人の 美術批評
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人形を持つ子供:アンリ・ルソーの世界




「人形を持つ子供」と呼ばれるこの作品は、「ポリシネル人形を持つ」子供と並んで、現存するルソーの子供の肖像画四点のうちの一点。前作同様、人形を持って正面を向いた子どもを描いている。

こちらは立った姿ではなく、座った姿だが、背景との間に関連性がなく、宙に浮かんでいるように見える。足も途中で消えてしまっているので、未完成のようにも見える。

しかめ面ぎみで、可愛げのない表情は、ルソーのほかの子どもの肖像画と同じ。ルソーには、子どもは天真爛漫に描くというポリシーはないようだ。おそらく親の依頼で描いたのだと思うが、こんな絵を喜んで受け取る気にはならなかったかもしれない。

右手に持った人形も、人形らしくない表情をしている。左手では菊の花を持っているが、菊の花は足元の花畑から摘んだのだろうか。花々は、草原から直接咲いたように描かれている。

(1905年頃 カンバスに油彩 67×52㎝ パリ、オランジュリー美術館)




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