壺齋散人の美術批評
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日曜日の早朝:ホッパーの世界




「日曜日の早朝(Early sunday morning)」と題したこの作品は、ホッパーの街景画の代表作の一つ。マンハッタンの七番街をイメージしているらしいが、ホッパー自身は特定の場所へのこだわりはなく、アメリカの都市に典型的な眺めを描いたのだといっているようだ。

二階建ての低いビルに収まった店の並びを描いたもの。人影がまったく見えないのは、日曜日の早朝だからか。あるいは折から深刻化していた大恐慌で、街から賑わいが消えていたせいか。

床屋の目印の例のポールが、人間の存在を暗示している。これが表に出ているというのは、店が営業中ということだろう。左手前に見える消火栓が、なにか場違いな印象を与える。

水平線を強調しているところは、「線路際の夕日」と同じ。「線路際の夕日」で線路が果たしていた水平線の役割を、この絵では街路が果たしている。観客はその街路を隔ててモチーフの建物に向かい合うのである。

なお、七番街に高層ビル群が立ち並ぶのは、恐慌後しばらくたってからのことである。

(1930年 カンバスに油彩 88.9×152.4㎝ ニューヨーク、ホイットニー美術館)



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