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クールベ「画家のアトリエ」:バルビゾン派の画家たち |
「画家のアトリエ(L'Atelier du peintre)」は、「オルナンの埋葬」と並んでクールベの最高傑作というべき作品。かれはこれを、1855年のパリ万博に出展したいと思ったが、拒絶されたので、当時彼のパトロンであった画商のブリュイアスの協力を得て、万博会場近くに独自のパヴィリオンをたて、そこで個展を催したのであった。これは、絵画史上初の個展といわれている。 クールベ自身がつけたタイトルは、「画家のアトリエ、わが七年間の芸術生活の一面を決定した寓話(L'Atelier du peintre. Allégorie Réelle déterminant une phase de sept années de ma vie artistique)」というもので、いかにも自己愛の強いクールベらしさを感じさせるものである。 絵の解釈については、クールベ自身がヒントを与えている。画面中央でカンバスに向っているのがクールベ自身、その隣に立っている裸婦は芸術の女神、画面右手にはボードレールはじめ同時代の芸術家たち、左手にはさまざまな階層の人々が描かれ、それぞれが何らかの形で当時の社会問題についての批判を込めているという。 大勢の人物の集合写真を思わせる絵だというので、ベラスケスの「ラス・メニーナス」と比較されることがある。「ラス・メニーナス」の人物たちは、みな一様に画面のこちら側、つまり観客の立っている方向に顔を向けているのに対して、この絵の中の人々は、それぞれ勝手な方向を向いている。 これは、画家の部分を拡大したもの。モデルはクールベ自身である。かれが向っているカンバスには、屋外の風景が描かれている。それが画家やその他の人々がいる屋内の空間とどこかミスマッチを感じさせる。裸婦は芸術の女神としての資格で、クールベの仕事ぶりを見守っているのであろう。 (1855年 カンバスに油彩 361×598cm パリ、オルセー美術館) |
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