壺齋散人の美術批評
HOME ブログ本館 | 東京を描く 水彩画 日本の美術 プロフィール 掲示板



シエスタあるいは夕べ:ボナールの色彩世界




「シエスタ」とは、昼食後の昼寝のことだが、この絵では夕べの転寝を意味しているようである。題名に「シエスタあるいは夕べ(La sieste ou soir)」とあるところから、そう解釈される。画面の下部の中ほどに、安楽ベッドに横になった女が描かれ、それを二人の女が見守り、また、遠方の木の陰には別の少女が見つめている。二人の女の傍らには、黒い犬も控えている。まことにのどかな眺めである。


遠景に川が見えるが、おそらくセーヌ川であろう。ボナールは、セーヌ川の下流のヴェルノンに家を構えていたから、この絵の背景は、ヴェルノンの景色なのだろう。昼寝しているのは、内妻のマルトと思われる。他の女性たちの身元はわからない。

モデルの人物たちが画面の下部に寄りすぎているので、構図的には不安定さを感じさせるが、その分、背景をにぎやかに表現している。だからこの絵は、人物を伴った風景画といえる。

(1914年 カンバスに油彩 84×113㎝ ベルン美術館)



HOMEボナール次へ









作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2011-2021
このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである