壺齋散人の美術批評
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田園交響楽:ボナールの色彩世界




「田園交響楽(La Symphonie pastorale )」と題されたこの作品は、1916年から1920年にかけて制作されたボナールの大作である。もともと画商ベルネーム・ジュヌのコレクションとして、かれのアパートの壁を飾っていたという。ボナールの作品の中でも、傑作の呼び声が高い作品である。

田園の牧歌的なイメージを色彩豊かに表現している。緑とブルーを基調にした雄大な自然を背景にして、画面下に一連の牧歌的な人物像が配置されている。左手には牛の乳を搾る女、その左、画面中ほどにはヤギのような動物をあやす少年、そして右手には、鹿を愛撫する二人の女。この鹿に、ディアナによって鹿に変身させられたアクタイオンの神話を読み解く説があるが、読みすぎかもしれない。そんな読み方をせずとも、モチーフのもつ田園ののびのびとしたイメージは伝わってくる。

フォルムよりも色彩を重視する姿勢は、この時期のボナールに特徴的なことだ。その色の塊のニュアンスの相違が、田園や樹木を連想させるようになっている。これはただ見られるだけの作品ではなく、いろいろと人に考えさせるような絵である。

(1916-1920年 カンバスに油彩 130×160㎝ パリ、オルセー美術館)



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