壺齋散人の美術批評
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コート・ダジュール:ボナールの風景画




ボナールは、1909年以来毎年南仏を訪れ、明るい日の光を浴びた風景を描き続けた。「コート・ダジュール(Côte d'Azur)」と題されたこの絵は、そうしたものの一つ。南仏の海岸「コート・ダジュール」の風景をモチーフにしている。

海は背景の片隅に申し訳程度に見えるにすぎない。海からかなり離れたところから、海をバックにして、その手前に広がる眺めを捉えたものだ。構図にはたいした工夫は見られないが、色遣いは、ボナール独特のタッチを感じさせる。

それぞれの独立した被写体はざっくりとした色の塊として表現され、明確な輪郭はない。こういう表現の仕方は、印象派にも後期印象派にも見られなかったもので、ボナールの独自性を強く感じさせる。

(1923年 カンバスに油彩 79×76㎝ ワシントン、フィリップス・コレクション)



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