壺齋散人の美術批評
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庭:ボナールの風景画




ボナール晩年の絵画、とくに風景画は次第に抽象的になっていった。具象的な形にとらわれず、それらしく見えればよいといった姿勢が見て取れるようになる。「庭(Le jardin)」と題したこの絵は、そうした抽象的な風景画の代表的なもの。

草木らしきものの間を、道を思わせる線が描かれてはいるが、形態は明確ではなく、よく見ないと、なにが描かれているかわからないほどである。そのわかりにくさは、具象の配列にまったく秩序がないことにも関係しているだろう。単に具象を抽象化するばかりでなく、その配列の秩序を混乱させてもいるのである。

ボナールは、風景を描くときには、空とか水平線にこだわったものだったが、ここには空も水もない。具象の帯びる色彩が氾濫しているばかりである。なお、これはパリのプチ・パレにあるのだが、グラン・パレにも、同じモチーフの絵がある。

(1937年頃 カンバスに油彩 127×100㎝ パリ、プチ・パレ<市立美術館>)



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