壺齋散人の 美術批評 |
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トランプをする人々(Les joueurs de cartes):セザンヌ |
セザンヌは、静物画と並んで人物画もよく描いた。だが、セザンヌの人物画の描き方は一風変わっていた。人物画と言えば、モデルの人柄とか雰囲気とかがおのずと漂ってくるように描くのが普通のやり方だが、セザンヌの絵の中の人物たちは、そうした人間的な個性というものを感じさせない。まるで、人間の姿形をした静物であるかのように、人物を描いている。 「トランプをする人々(Les joueurs de cartes)」と題するこの絵を見ると、セザンヌの人物画の特徴がよくわかる。二人の人物がテーブルを挟んでトランプ遊びをしているが、彼らにはほとんど表情らしいものが伺えない。トランプを握っている手にも、本来なら動きがあるはずなにに、そうした動きを感じさせない。人物はまるで、人間の形をした置物のような印象を与える。それが絵全体に静かな雰囲気を醸し出す要因となっている。 セザンヌはモデルになった人々に対して、静物のようにいつまでもじっと動かないでいることを求めたという。だからセザンヌの絵のモデルになった人々は、座り続けていることに非常な苦痛を感じたという。 セザンヌにとっては、絵のモデルという点では、リンゴも人間も基本的には変わりのないものだったのだ。 (1890 -1892年、キャンバスに油彩、45×57cm、パリ、オルセー美術館) |
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