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慈善家ロベール・マケール:ドーミエの風刺版画 |
この作品も「ロベール・マケール」シリーズの一つ。ここではロベール・マケールは慈善家に扮している。慈善家というのは皮肉で、健康増進剤として浣腸を売りつけ、大儲けしていた商人をモチーフにしたもの。その商人は、自分のやっていることはただの商売ではなく、慈善行為だと開き直っていた。 大きな壁に書かれた文句に、大勢の人々が見入っている。文句は「浣腸の会社、年に12フランで、健康な方にも病気の方にも、あらゆる方にお届けします」と読める。当時は、こんな文句もたやすく信じられていたのである。 左手前に、大男ロベール・マケールと相棒のベルトランが描かれている。ロベールのモデルとなったのは、大衆演劇で悪徳商人を演じたフレデリック・ルメートルだという。この演劇は政府によって上映禁止となった。それではもったいないというので、ドーミエは芝居を見た記憶だけでも呼び覚ましてほしいと、この石版画を描いたのである。 (1836年8月、リトグラフ 27.5×22.7㎝) |
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