壺齋散人の 美術批評 |
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ムスメ:炎の画家ゴッホ |
ゴッホはアルルで多くの人々の肖像画を描いた。それらの人々はみな、現地の名もない人々である。この少女の肖像もそうした無名の人の肖像画だが、ゴッホはこの少女に特別の名をつけてやった。「ムスメ」と言う名である。この「ムスメ」という名前がこの絵のタイトルになった。 ゴッホの日本趣味はパリ時代からのものだが、アルルに来てからもその趣味は衰えなかった。彼は当時ピエール・ロティの小説「お菊さん」を読んで、日本への興味を改めて掻き立てられた。この絵にはその余波のようなものが感じ取れる。 ゴッホはこの少女にお菊さんのイメージを重ねたようなのだ。だがそれにしては、彼女の服装にも仕草にも日本的なものは全く感じられない。ゴッホは「ムスメ」という日本語を用いることで、かろうじてこの絵に日本的な要素を付加したつもりでいたようである。 無地の背景をバックにして、赤を生かしたインパクトの強い色彩配置になっている。また花や衣装の縁に白を効果的にあしらうことで、絵にダイナミックな感じを醸し出させている。 (1888年7月 カンバスに油彩 74×60㎝ ワシントン国立絵画館) |
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