壺齋散人の 美術批評 |
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ジヌー夫人:炎の画家ゴッホ |
ジヌー夫人はアルルで知り合った女性である。カフェの経営者だった。ゴッホは1988年11月にこの女性の肖像を二点油彩画に描いている。これはそのうちの一枚。この他ゴッホは、1890年2月に、ゴーギャンの描いた夫人の肖像を下絵にした作品も作っている。特別の親しみを感じていたのだろう。 もっとも彼らの関係は暖かいものではなかった。彼女は、おそらく更年期障害の影響で気分が安定していなかったし、ゴッホも又この時期気分が不安定だったらしく、二人はたびたび喧嘩したようだ。 それでもゴッホはこの女性に、芸術的なインスピレーションを感じ取ったようで、彼女の肖像を複数描いた。その描き方には、フランドルの肖像画の伝統を指摘する見方もある。 無地の背景の上に人物の何気ない表情を描くというのが、ハルスやレンブラントの肖像画に通じるというのだが、この女性の服装ばかりは、南仏を感じさせるものとなっている。 テーブルの上に二冊の本が置かれているが、ほとんど同じ構図をとっている1890年の作品では、これらの本はそれぞれ、ディケンズの「クリスマス・キャロル」とストウの「アンクル・トムの小屋」とわかるように描いている。1890年の作品の下敷きにされたゴーギャンの絵では、夫人の前のテーブルにはワインボトルが描かれている。 (1988年11月 カンバスに油彩 92.5×73.5㎝ ニューヨーク、メトロポリタン美術館) |
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