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オーヴェールの教会:炎の画家ゴッホ |
オーヴェール・シュル・オワーズは、セーヌ川の支流オワーズ川沿いの町で、パリの北西数十キロの地点にある小さな町である。その町の中心部あたりに協会が立っていた。この絵はその教会を描いたものである。 一見して奇妙な感じに打たれる。昼間の光景を描いたに違いないのに、空は青黒く塗られて、それだけ見れば夜空のようでもある。またこの絵には、建物にも人物にも影がない。といって曇天というわけでもないので、この絵は自然現象を無視して、心の中の風景を描いたように受け取れる。 この教会は一応ゴシック形式をとっていて、縦長の尖塔もついているのだが、ゴッホはそうした外観を無視するように、建物全体を平べったく見せるように描いている。そのことでこの建物が台地に根を下ろしていると強調したかったのだろうか。 前景には教会を挟んで道が二つに別れ、その左側の道を一人の農婦らしい女が歩いていくところが描かれている。ゴッホはこのように、風景になるべく人物を添えるように努めていた。(例外はあるが) ゴッホはオーヴェールで創作活動をしていた画家ドービニーの家の庭園を描いたが、その絵にも背景としてこの教会が描かれていた。 (1890年6月頃 カンバスに油彩 94×74㎝ パリ、オルセー美術館 ) |
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