壺齋散人の 美術批評
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耳に包帯をした自画像:ゴッホの自画像21




「耳に包帯をした自画像(Self-Portrait with Bandaged Ear)」と題したこの絵も、前作「パイプを咥え耳に包帯をした自画像」とほぼ同じ時期に描かれた。この絵も結構念入りに描かれているが、それは彼の病状を心配する医師たちに対して、自分が健康な状態にあることをアピールするためだとする見方もある。

この絵の中のゴッホは、パイプを咥えていないが、その他の点では前作と全く同じ格好をしている。だが、相違もある。背景が詳しく描かれていることだ。画面左手にはキャンバスを載せたイーゼルが、右手には青いドアが描かれている。そして中程の壁には日本の浮世絵のコピーが張られている。

ゴッホの浮世絵好きは徹底していた。彼は、日本の浮世絵から絵の描き方を学んだとも言っているほどだ。前にも言ったように、形の輪郭を明確に描くことなどは、明らかに浮世絵の影響だと思われる。

この部屋は、ゴーギャンとの共同生活の舞台となった場所だ。ゴッホはこの部屋で、再び芸術家との共同生活をしたいという抱負を持っていたが、それはついにかなわなかった。地元の住民の請願によって、程なく精神病院に舞い戻り、その後入院と退院を繰り返しているうちに、1年半後に死んでしまうのである。

(1889年1月、キャンバスに油彩、60×49cm、ロンドン、コートールド・ギャラリー)





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