壺齋散人の美術批評 |
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エビ売りの少女 ホガースの油彩画 |
ホガースは、版画家としては有名だが、油彩画家としてはあまり高くは評価されていない。そんな彼の油彩画のうち、最も有名なのが「エビ売りの少女」と呼ばれるこの作品である。これは一応肖像画ということになっているが、注文を受けて描いたわけではなく、ホガース本人の気晴らしとして描かれたものらしい。ホガース生存中は常に手元に置かれ、死後も妻はこれを売却せずに手元においた。クリスティーズのオークションにかけられたのは、妻の死後1789年である。その際に、カタログに「エビを売る少女」と記された。 かなり自由な筆遣いを感じさせる。シンプルな背景の中に、少女のはちきれそうに明るい表情が、ラフなタッチで表現されている。少女はエビやムール貝を並べた籠を頭の上にのせており、落とさないようにと微妙なバランスをとっている。 ホガースは多くの肖像画を手掛けており、人間を描くのは得意だったはずだが、なぜか人間の肉体を描くのが下手だと噂されていた。それに反発した妻が、夫の死後この絵を見に来た客に向かって次のように言ったと伝えられている。「この絵には、人間の肉と血がありますわ」。 (1740年代 カンバスに油彩 63.5×52㎝ ロンドン、ナショナル・ギャラリー) |
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