壺齋散人の 美術批評
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ペルシャの巫女:ミケランジェロ「システィナ礼拝堂天井画」




システィナ礼拝堂天井画には、シビュラと呼ばれる巫女の画像が五点ある。シビュラとは、古代ギリシャにおけるアポロンの神託を媒介する巫女のことを言った。聖書との関連は殆どないといってよいが、ミケランジェロは一群の預言者像を描き入れることに伴うバランス上の配慮として巫女を加えたのかもしれない。ミケランジェロの時代には、女の預言者といえばシビュラのことをさしたくらい、シビュラは人々に訴えるものがあった。

ペルシャの巫女は、アレクサンダーの偉業を予言したと言われる。一方、バビロンの巫女と呼ばれたり、エジプトの巫女と呼ばれたりもして、その正体にははっきりしないところが多い。

ミケランジェロはペルシャの巫女を、年老いた老婆として描いている。その根拠ははっきりしない。巫女の背後の人物は、かなりぼかした表現となっており、手前の巫女の姿を強調する効果を果たしている。



十二図の預言者・巫女の像のすべての背後に、男女一組のプット(複数形プッティ)が描かれている。それも、柱を飾る彫刻の形である。プットは聖書に出てくるエンジェル(ケルビム)と混同されやすいが、厳密に言えば両者は同じものではない。プットは、天使ではなく世俗の子供であり、したがって翼も持たない。





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