壺齋散人の 美術批評
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フアン・グリス:モディリアーニの肖像画




一時期石彫りの彫刻に熱中していたモディリアーニは、1914年ごろから再び絵画を手掛けるようになった。そのほとんどは友人たちや町で出会った人々を描いた肖像画であった。それらの肖像画にモディリアーニは、彫刻家としての経験を最大限盛り込んだ。対象をそのままに写し取るのではなく、様式的に表現し直す、その様式とはアフリカ彫刻に触発された独特のボリューム感を感じさせるものだった。

1915年に描いたフアン・グリスの肖像画は、このような様式性を強く感じさせる最初の例の一つだ。量感のある太い首の上に、顔を斜めに乗せ、眼、鼻、口などそれぞれの部分は、軽くデフォルメされている。特に鼻の形は、アフリカ彫刻からインスピレーションを受けたと思わせるものがある。

フアン・グリスは、ピカソやブラックとともにキュビズムの運動を推し進めた画家で、モディリアーニと同じ頃に、スペインからパリに出て来た。二人が出会ったのは1910年頃のことで、それ以来親しくするようになった。

(1915年、キャンバスに油彩、55.5×38.0cm、ニューヨーク、メトロポリタン美術館)





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