壺齋散人の 美術批評
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座る裸婦:モディリアーニの裸婦像




モディリアーニは1917年に数多くの裸婦像を描いたが、それは友人のズボロフスキーがモディリアーニのためにモデルを雇ってくれたからだった。裸婦を描くことは無論モディリアーニの希望であったろうが、ズボロフスキーのほうでもまた、それを勧めたのかもしれなかった。

この絵は、1916年に描かれたものである。モデルが誰かははっきしない。ベアトリス・ヘイスティングスではないかという説もある。木炭で裸のベアトリスをスケッチしたものと比較すると、そう思われないでもないが、あまり定かではない(ベアトリスとは、1916年の中ごろに別れている)。

1917年中に描かれた多くの裸婦像が、観客のほうに顔を向けて挑発的な表情をしているのに対して、この絵の中の裸婦は、あたかも自分の裸体を恥じらうように、伏し目がちで、頼りなさそうなポーズをしている。もしもこれがベアトリスだったなら、彼女はもっと堂々とした表情をしていてもよいはずだ。

(1916年、キャンバスに油彩、92.4×59.8cm、ロンドン、コートールド・コレクション)





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