壺齋散人の 美術批評
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寝椅子に座る裸婦:モディリアーニの裸婦像




1917年はモディリアーニにとって「裸体画の年」といっていいほど多くの裸体画を描いた。翌年の1918年になるとエルヴィーラの立像などの外は、裸体画をほとんど描かなくなるから、この年がいかに特別の年だったかがわかとうというものだ。

モディリアーニは、裸体画を描くにあたっては、一定のポリシーを持っていたようだ。というのも、それらの裸体画が先行する裸体画の伝統を強く意識していたことを感じさせるからだ。モディリアーノの裸体画のモデルの多くは、寝そべっているポーズをとっているが、それらは、たとえばゴヤのマハであったり、マネのオリンピアであったり、さらにはジョルジョーネやティツィアーノのヴィーナスを連想させる。モディリアーニは、こうした過去の裸体画の伝統に掉さすことによって、裸体画にもそれなりの様式美を見出そうとしたのかもしれない。

この絵のモデルは、椅子に座ったポーズをとっているが、よくよく見ると、ボッティチェリのヴィーナスとよく似ていることに気づく。ボッティチェリのヴィーナスが貝殻の上に立っているのに対して、このモデルは寝椅子の上に座っているのだが、上半身のポーズは、逆を向いているほかは全く同じだ。斜めに傾げた首の上に、逆の角度で頭を乗せ、片方の腕で胸を押さえている。

この首と頭の組み合わせ方は、この後のモディリアーニの絵の大きな特徴へと発展していく。

(1917年、キャンバスに油彩、100×65cm、個人蔵)





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