壺齋散人の 美術批評
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ヴァン・ムイデン夫人:モディリアーニの肖像




「ヴァン・ムイデン夫人の肖像」と題したこの絵が、構図的に「寝椅子に座った裸婦」と非常に似ていることは、両者を同じ平面に並べてみるとよくわかる。ヌードではなく着物を着て、片手を胸にはあてていないけれど、この絵のモデルは、裸婦とよく似た表情をしている。特に斜めに傾げた首と、それと逆向きに交叉させている顔の様子が。

モディリアーニは、この絵を描くことによって、自分らしい様式美をほぼ完成させたと言ってよい。裸婦を描いた時に採用した、ボッティチェリの様式が、普通の女性の肖像にも適用されるにいたったわけである。首をかしげた裸婦には、あまり精神性は見られなかったが、こうした具合に女性が首をかしげると、人は不思議と、そこに精神性を感じるものだ。

ヴァン・ムイデン夫人がどんな人であったか、よくはわからない。おそらく誰かを通じてモディリアーニを知り、自分の肖像画も描いて欲しいと依頼したのだろう。

(1917年、キャンバスに油彩、55×38cm、ローマ、国立近代美術館)





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