壺齋散人の 美術批評 |
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黒いネクタイの女:モディリアーニの肖像画 |
「黒いネクタイの女」と題したこの絵は、「寝椅子に座った裸婦」、「ヴァン・ムイデン」夫人の延長線上にあるだけでなく、モディリアーニにとってひとつの頂点をなしているともいえる。この絵には、それまでモディリアーニが試行していきた様式上の要素がもれなく盛り込まれているとともに、精神的な要素も感じられる。それはオーラと言ってもよい。 つまりこの絵は、構図上の様式美と雰囲気の精神性とが、見事に調和している。 首と顔との独特の組み合わせ、中心線をわざと外した配置、半弧を描いた眉毛、長い鼻の線、これらモディリアーニにとっておなじみの要素に加え、瞳の描き方にも新しいものが加わった。あのアーモンド形の眼の中にある瞳が、軽く塗りつぶされている。そのことによって、独特の精神的な雰囲気が強められている。 モデルも単純化されているが、背景はもっと単純化されている。その単純化された背景の中に浮かび上がるモデルは、これまでの絵と違って、輪郭線を強調していない。そのかわりに、黒いネクタイが強烈なアクセントとなっている。 (1917年、キャンバスに油彩、65.4×50.5cm、東京、フジカワ画廊) |
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