壺齋散人の 美術批評 |
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王道12宮:ミュシャの世界 |
「王道12宮(Zodiac)」は、印刷業者シャンプノワの依頼を受けて、カレンダーの図柄として制作された。ミュシャはほかにも、シャンプノワのためにカレンダーの図柄を手掛けている。それらは非常に人気を博したので、装飾用パネルに仕立てなおされて個人向けに販売されたものだ。ミュシャの装飾的な作品は、庶民の消費の対象となっていたわけである。 王道12宮とは、太陽が描く見かけの軌道のことで、それぞれが星座に対応し、したがって各月にも対応することから、カレンダーの図柄としてふさわしいわけである。そのカレンダーの中心に、美しい女性の横顔が配されている。女性の髪は例によって優雅な曲線を描き、また彼女が身に着けている装飾品は、いずれも複雑な模様を表している。ミュシャ得意のイメージである。 画面の下の枠に、カレンダーが収まるようになっており、実際はじめはそうしたものとして登場したが、この絵では、カレンダーの代わりに有翼のケルビム(天使)が描かれている。このように趣向を変えてさまざまなバージョンを売り出したわけである。ミュシャは自分の芸術を金儲けに使うことを心得ていたのである。 非常に華やかなイメージのこの作品は、大好評を博し、ミュシャの代表作の一つに数えられるようになった。 (1896年 紙にリトグラフ 65.7×48.2㎝) |
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