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原故郷のスラヴ民族:ミュシャのスラヴ叙事詩1 |
スラヴ叙事詩を構成する20点の作品のうち最初に完成したのが「原故郷のスラヴ民族」と題したもの。壁画を思わせるような巨大な画面に、草創期におけるスラヴ民族の境遇が描かれている。ここでいう原故郷とは、無論ミュシャの故郷チェコのことだろう。そのチェコにスラヴ民族が住み着いたのは紀元3ー6世紀のことといわれる。 その頃のスラヴ民族は農耕民族だった。それを周辺の蛮族がたびたび襲った。絵は、押しかける蛮族の集団を背景に、迫害から逃れるスラヴ人や、その守護神が描かれている。守護神は、画面右手に両腕を大きく広げて空中に浮かんでいる姿であらわされ、その両腕には戦争と平和を象徴する男女がぶら下がっている。 後景はあいまいなタッチで描かれ、手前にくるにしたがって明確なイメージになる。それが画面全体に深い遠近感を醸し出している。 これは画面前景にいる男女。背後から迫る蛮族におびえながら、茂みに隠れている様子を描く。女性の目には強い恐怖感が、その隣の男性の目には深い焦燥感がうかがわれる。 (1911年 カンバスにテンペラ 610×810㎝) |
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