壺齋散人の 美術批評 |
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輪を持つ少女:ピカソ、子どもを描く |
1910年前後から、ピカソはキュビズムの時代という段階に入る。キュビズムは形態をいったん解体したうえで、再構成するという特徴からして、子どもを子どもらしく表現することが難しく、したがってこの時期には、子どもをテーマにした絵をあまり描いていない。そんななかで、この「輪を持つ少女(Fillette au cerceau)」は、キュビズムの様式で子どもの表現に取り組んだ数少ない作品の一つである。 この絵のモチーフになっている少女は、そういわれてみなければ、すぐに少女とわかるような特徴に乏しい。そこでピカソは、少女に少女らしい道具を組み合わせることによって、モチーフが少女だということを明らかにしようと努めた。この絵の場合には、左手で持っている輪っかがそれにあたる。このおもちゃの輪っかを持っていることで、見ている者はこれが少女だと推測するわけである。 こうした手法は、後のマヤを描いた作品においても、反復された。マヤの場合には、表情そのものも子どもらしさを感じさせるのだが、それと併せて人形を持つ仕草が、いっそう子どもらしさを感じさせるのである。 (1919年、キャンバスに油彩、142.0×79.0cm、パリ、国立近代美術館) |
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