壺齋散人の美術批評
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聖心:ルドンの宗教画




一時期のルドンは、聖書に取材した宗教的なテーマを描いた。「聖心(Sacré-Cœur)」と題するこの絵もその一つ。キリストのイメージをストレートに表現している。キリストをモチーフにした作品には、受難とか悲しみといったものを表現するものが多いのだが、この作品は、タイトルにあるとおり、キリストの心を表現している。

そのキリストの心は、炸裂する心臓の光として表現されている。この炸裂する光で、キリストは世界とそこに生きる人々を包み込もうとしているように見える。

この絵には、黒が効果的に使われている。黒はルドンがそまれで石版画を通じてなじんできた色だ。だが、画家として大成するためには、黒にこだわっていてはいけない。そう当時のルドンが思っていたことは、当時書いた手紙からもうかがえる。ルドンは、なるべく黒を使わず、豊かな色彩を表現したいと思っていたようであり、そうした気持ちがこの絵からは伝わってくるように思える。そういう意味ではこの絵は、ルドンにとっては過渡的な作品だといえよう。

(1895年頃 紙にパステル 60×46㎝ パリ、ルーヴル美術館)



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