壺齋散人の美術批評 |
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オディロン・ルドンの幻想風絵画 |
オディロン・ルドン(Odilon Redon 1840-1916)は、年代的にはモネと同年の生まれだし、また、印象派展に出展したこともあるので、印象派の画家たちと親縁関係にあると思われることが多い。だが、画風は全く違うし、密接な付き合いがあるわけでもなかった。画風の点では、印象派が光にこだわり、また、自然の息吹を描くことを好んだのにたいして、ルドンは光には全くと言ってよいほど関心を持たず、自然の外面を描くよりも、人間の内面を表現することを好んだ。その画風には幻想的な雰囲気を感じることができる。だからここではルドンを、「幻想風絵画」と呼ぶことにしたい。 |
ルドンは画家としては遅咲きである。その画業はおおよそ三つの時期に分けられる。ボルドーで孤独に修行していた時期、黒白画面の石版画を作った時期、そして色彩に目覚めた晩年である。かれは色鮮やかな作品を描くようになるのは、1890年代以降のことである。五十歳を過ぎていた。 修行時代のルドンは、暗いイメージの風景画を描いていたが、大した才能を感じさせない、むしろ下手な絵である。ルドンがルドンらしさを示すようになるのは、石版画の制作を通じてある。そこにルドンを導いたのは、ロドルフ・ブレダンである。ブレダンは放浪の画家であって、その放浪の途次たまたま立ち寄ったボルドーで、ルドンの指導をした。ルドンより18歳年長のブレダンは、いい刺激を弟子に与えた。ブレダンはデューラーの石版画の影響を強く受け、白黒の画面に人間の内面性を表出するような画風であった。それをルドは受け継いだ。ルドンの石版画には、人間の内面性を感じさせるような作品が多い。 1879年に最初の石版画集「夢のなかで」を刊行して以来、1880年代を通じて石版画家として活躍した。人間の内面をうかがわせるような作風である。とくに巨大な目玉へのこだわりが見られ、そのこだわりは、油彩を描くようになっても、「キクロプス」のような作品を生んだ。キクロプスは一つ目の怪物であり、その怪物にルドンは、自分自身の目玉へのこだわりを託したのである。 1890年代にはいると油彩画を描くようになるが、当初はぎこちない作風であった。白黒画面に適用していたコントラストを強調する作風が、油彩画ではうまく表現できなかった。かれが色鮮やかな色彩をコントロールし、彼独自の世界を作り上げるのは1900年代に入ってからである。その点ルドンは非常に遅咲きの画家だったといえる。 ルドンの油彩画の傑作は、60歳以降の晩年に描かれたものに多い。その特徴を簡単にいうと、色彩の豊饒さとモチーフの幻想的な雰囲気ということになろう。その幻想的な雰囲気のモチーフをルドンは、聖書やギリシャ神話などにもとめたり、花に囲まれた乙女のイメージといったもので表現した。最晩年になると、色鮮やかな静物画を手掛けるなかで、色彩の魔術ともいうべき、豊饒な世界を作り出した。ルドンの色彩へのこだわりは、ゴーギャンとかナビ派につながるものである。 ここではそんなオディロン・ルドンの主要な作品を取り上げ、鑑賞しつつ適宜解説・批評を加えたい。 夢の中で:ルドンの石版画 起源:ルドンの石版画集 アベルとカイン:ルドンの宗教画 聖心:ルドンの宗教画 セーラーカラーをつけたアリ・ルドンの肖像:ルドンの肖像画 キュクロプス:ルドンの神話風絵画 カリバンの眠り:ルドンの幻想風絵画 レオナルド・ダ・ヴィンチ頌:ルドンの幻想風絵画 仏陀:ルドンの幻想風絵画 ポール・ゴーギャン:ルドンの肖像画 ペガサス:ルドンの幻想風絵画 花の中のオフェリア:ルドンの幻想風絵画 アポロンの馬車:ルドンの幻想風絵画 蝶:ルドンの幻想風絵画 出現:ルドンの幻想風絵画 アポロンの馬車と竜:ルドンの幻想風絵画 ヴィオレット・エーマン:ルドンの肖像画 聖ゲオルギウスと竜:ルドンの幻想風絵画 ルッジェーロとアンジェリカ:ルドンの幻想風絵画 パンドラ:ルドンの幻想風絵画 長首の花瓶にさした野の花:ルドンの静物画 聖セバスエィアヌス:ルドンの幻想風絵画 貝殻:ルドンの静物画 オルペウス:ルドンの幻想風絵画 中国の花瓶にさした花:ルドンの静物画 白い花瓶と花:ルドンの静物画 |
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