壺齋散人の美術批評
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出現:ルドンの幻想風絵画




「出現(Apparition)」と題されたこの作品は、ボナールらナビ派とのかかわりを示すものと言われる。ボナールは、ナビ派の中心人物として、幻想的な画風の作品で知られている。ルドンの幻想的な画風に影響を受けたとされるが、ルドンはルドンで、ボナールらナビ派の動きに注目していたらしい。

幻想的というか、抽象的な画面の中に、二人の具象的な女性を配している。画面左手のかなり広い面積を、岩肌を背景にして、蝶とか花を思わせるイメージがうごめいている。それらの色彩は原色主体で、かなり鮮やかである。一方二人の女性は、白をもちいて単純なイメージに表現されている。

原題の「出現(Apparition)」には、幽霊という意味もある。二人の女性は、幽霊をあらわしているのかもしれない。マラルメの詩に、「出現(Apparition)」と題したものがあるが、ルドンがそれを意識していたかどうかは、わからない。ともあれ、白く塗りつぶされた女性のイメージが幽霊を想起させる。

(1910年 カンバスに油彩 64.8×49.9㎝ プリンストン大学美術館)



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