壺齋散人の美術批評 |
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驚き:ヴァトーのロココ世界 |
ヴァトーは、コンメーディア・デッラルテと深いつながりがあったようで、座付き役者たちの演技をモチーフとした作品をいくつも制作している。「驚きLa Surprise」と題されたこの作品もその一例である。 画面左手に抱擁しあう男女が描かれ、その右手にギターを弾く男が描かれている。また、画面右手下には犬が座っており、人間達の様子を観察している。ギターを弾いている男は、メッツェティーノ(フランス語読みでメズタン」という役者。おそらくコメディアンだと思う。 抱擁しあう男女は、自分たちの情念に溺れていて、 メッツェティーノの存在には無関心に見える。それでもメッツェティーノは、ギターを弾くのをやめない。ギターを弾きながら男女の抱擁を見ているのは、かなりつらいことに違いない。自ら奏でる音楽が、自分の情念まで刺激するからだ。 人間達がそれぞれの情念に溺れているのに対して、犬のほうは、犬なりの流儀で冷静である。 (1718年頃 板に油彩 36.4×28.2㎝ ロサンゼルス、ゲッティ美術館) |
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