壺齋散人の美術批評 |
HOME | ブログ本館 | 東京を描く | 水彩画 | 日本の美術| プロフィール | 掲示板 |
チャプスイ:ホッパーの世界 |
チャプスイ(Chop suey)とは、アメリカ流中華料理の店。広東出身の中国人が、アメリカで広めた中国料理の名称が、そのまま中国料理全体を代表する名前になった。チャプスイ自体は、肉と野菜をいためてとろみをつけた料理という。 この絵は、そのチャプスイ食堂の内部を描いたもの。店内の空間が大きく描かれ、人物が画面の端に寄っている構図は「オートマット」と同様である。「オートマット」に描かれているのは一人の若い女性であったが、この絵の中には四人の人物が描かれている。手前に互いに向き合った二人の女性、左手奥に男女のカップル。 手前の二人の女性は、くつろいだ姿勢でなにか語り合っているように見える。批評家の中には、この二人が互いを意識せずに、自分の中に閉じこもっているというものがあるが、それはうがちすぎた見方というべきだろう。 奥のカップルのうち、女性のほうは横顔の一部がのぞいているにすぎない。このように人物を、フルサイズで描かず、半身ないし一部だけを描くというのは、ホッパーの特徴の一つである。 とにかく、店の中の空間が強調されており、人物はその空間をもり立てるための小道具のように見える。小道具と言えば、窓の外の看板にも、チャプスイの文字の一部が見えている。 (1929年 カンバスに油彩 81.3×96.5㎝ 個人コレクション) |
HOME | ホッパ ー| 次へ |
作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2011-2021 このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである |