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コロー「真珠の女」:バルビゾン派の画家たち




1860年代の後半以降、コローはリューマチを患うようになって、屋外での写生が困難となり、アトリエで人物画を手がけることが多くなった。「真珠の女(Femme à la perle)」と呼ばれるこの作品は、コローの人物画の代表作である。

画面から一見してわかるとおり、ダ・ヴィンチの「モナリザ」を強く意識した作品である。上半身を斜め向きにして、顔をこちらに向け、両手を組んでいるポーズはモナリザと全く同じである。異なるのは、モナリザのシンボルである微笑が、この女性には欠けていることだ。そのかわりに、引き締まった口元と理知的な目が強い印象を与える。

モデルは、自宅近所の織物商の娘ベルト・ゴールドシュミット。この時、ベルトは16歳だったという。年齢の割に大人びた雰囲気を感じさせる。ベルトの髪から額にかけて植物でつくった飾り物をかぶっている。その額にある部分が真珠のように光って見えることから、「真珠の女」と呼ばれるようになった。

(1868―70年 カンバスに油彩 70×54cm パリ、ルーヴル美術館)




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