壺齋散人の 美術批評 |
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朝の化粧:ドラクロアの裸体画 |
ドラクロアが裸体画を描くときには、だいたいは神話や伝説の中に登場する女性を、他の登場人物とともに描いており、この作品のように、一人の女性の裸体に焦点を合わせて、アップで描くのは珍しい。日常のなにげない仕草を描いたところは、印象派以後の裸体画、たとえばルノワールやドガなどを連想させる。 もっとも「朝の化粧(Le lever)」と題するこの裸体画は、単に女性の裸体をリアルにストレートに描いているわけではなく、そこには寓意が込められている。女性は鏡に向かって髪をくしけずっているのだが、その鏡の背後にはなにやら人物が潜んでいる。これは悪魔だというのが通説だ。悪魔が鏡の背後から女性を伺っているのは、誘惑の機会をねらっているということだろう。 この解釈が妥当ならば、この絵は、悪魔の誘惑に陥りそうになっているイヴをあらわしたものということになる。彼女の裸体が、その誘惑に答えているのである。だからこの絵は、「堕落したイヴ」をモチーフにしたといえる。ドロクロアらしいモチーフである。 この絵は、ヴェネツィア風の色彩が特徴である。燃えるような赤いカーテンを背景に、裸体も部屋の内部も暖色であふれている。 (1850年 カンバスに油彩 46×38cm パリ、ギャルリー・シュミット) |
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