壺齋散人の美術批評
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竹馬 ゴヤの装飾画(タペストリー下絵)




1788年にカルロス三世が没し、カルロス四世がスペイン国王に即位する。ゴヤはその翌年(1789)に、カルロス四世付の宮廷画家に任命され、引き続き宮廷画家としての職務に励むことになる。その頃のゴヤの美術面での主要な仕事は、王の離宮の装飾にかかわるものだった。すでにカルロス三世のために、パルド離宮のタペストリー下絵シリーズの制作に取り組んでいたが、つづいてカルロス四世の離宮サン・ロレンソ・エル・エスコリアル宮殿のタペストリー制作に従事した。「竹馬(Los zancos)」と題するこの作品は、シリーズ最後を飾るものである。

モチーフは、タイトルにあるとおり竹馬に乗った男たち。画面には、竹馬をあやつる二人の男が描かれている。この竹馬はかなり不安定らしく、それぞれバランスをとる男が従っている。竹馬の向かう先の建物のバルコニーからは、若い女が身を乗り出しており、竹馬に関心を示している。その若い女を、竹馬に乗った男たちは、見ないふりをしている。

竹馬を囲んで、大勢の人々が集まっている。はしゃぎまわる子供や、演者の表情を見上げる大人たち。かれらはたまたま通りがかったというよりは、見物のためにわざわざ集まってきてように見える。とするとこの竹馬は、大道芸人の仕業なのであろう。竹馬の背後からマントを着た男たちがついていくが、この男たちは楽器を演奏しているようにも見える。

当時の庶民生活に取材した風俗画であろう。

(1791-1792年 カンヴァスに油彩 268×320㎝ マドリード、プラド美術館) 


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