壺齋散人の美術批評
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むち打ち苦行者の行進 ゴヤの風刺画




「むち打ち苦行者の行進(Procesión de disciplinantes)」と呼ばれるこの絵は、「闘牛」、「狂人の家」、「異端審問」とともにシリーズを構成する。このシリーズは、フェルナンド七世によるペイン王政の復活に伴い、カトリック的な保守頑迷さも復活したことに、ゴヤが批判の意を込めたものと言われている。この作品は、中でももっとも批判精神に満ちている。

Disciplinantesというスペイン語は、悔い改めて自分を鞭打つ苦行を課した 者のことをいう。同じカトリック国のイタリアでも、同じような苦行者の行列が見られるという。この絵は、その苦行者たちの行列する様子を描く。

三角のとんがり帽子や白い腰巻の男たちが行進し、その周囲を大勢の人々が取り囲んでいる。苦行者の行進は、当時のスペインの庶民にとってエンタテイメントだったようである。苦行者の背中には、鞭で打たれ血を流した傷跡が見える。かれらの苦行とは、鞭で背中を打たれることなのである。

見物人たちの頭上には、ソレダの聖母、エッケホモ、十字架のキリストなどをあしらった出しものが掲げられている。その反対側には幟が見える。

(1812~1819年 板に油彩 46×73㎝ マドリード、サンフェルナンド王立芸術アカデミー)



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