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尋問されるヒューディブラス:「ヒューディブラス」へのホガースの挿絵




サミュエル・バトラーの著作「ヒューディブラス」へのホガースの挿絵第九点目は「尋問されるヒューディブラス(Hudibras Catechiz'd)」と題する。第六点目で出てきた女にヒューディブラスが興味を持ち、その思いが成就されるかどうか占星師に占わせたりしたことで、地元の連中が不信感を抱き、かれを尋問する場面である。

ヒューディブラスは部屋の中に押し込められ、そこで尋問を受けている。どういうわけかマスクをかぶった男が尋問者となり、ヒューディブラスを棒で威嚇しながら、白状せよと迫っている。何を白状するかというと、何故あの未亡人を愛し、結婚したいと思うようになったか、その理由を白状しろというのである。尋問者の傍らには、もうひとり棒を振り回している男がおり、また、部屋の扉のところには女性が立っているが、これがヒューディブラスが思いを寄せる相手なのであろう。

これは、宗教的な対立を表現しているのであろう。イギリスの伝統的な国教会とピューリタンは不倶戴天の敵同士である。庶民の大多数は国教会に属しており、かれらにとってピューリタンは、異分子そのものである。そのピューリタンであるヒューディブラスが、国教徒の未亡人と結婚しようとするのは、彼らにとって受け入れられないことだ。

そんなわけで、地元の人々は、ヒューディブラスの野心を砕こうとする。それにはまことしやかな理由が必要なので、かれらはヒューディブラスが金の力で未亡人を抱き込もうとしていると主張し、その動機の不純さをあげつらうのである。



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