壺齋散人の 美術批評
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サン・ラザール駅:モネ




1877年にモネは、サン・ラザール駅をモチーフにした一連の絵の制作に熱中した。このために彼は、駅付近のモンソー街にアトリエを借りたほどだ。そして描き上げた作品九点をその年に開かれた第三回目の印象派展に出展した。例によって文学者のエミール・ゾラが絶賛してくれた。これらの絵を、「大画面に繰り広げられた近代絵画である」と言って。

モネはサン・ラザール駅に、鉄骨とガラスで表現された近代的な建築美を認めた。そしてその新しい美の様相を平面に表現しようとした。対象をこのように平面に表現しようとするについては、日本の浮世絵版画がすぐれた手本になった。モネは三次元的な建築物を、二次元の平面にどうやったらうまく表現できるか、そのヒントを浮世絵版画に求めたのである。

上は九点のうちの、「列車の到着(La gare St Lazare, arrive d'un train)」と題する一点。サン・ラザール駅の巨大構築物の空間の中に、列車が煙を噴き上げながら入って来る様子を描いている。モネは、その煙の躍動感と、建築物の確固とした存在感とを、絶妙な調和のうちに表現している。(1877年 カンバスに油彩 83.1×101.5㎝ ハーヴァード大学美術館)



この絵は、構築物のほうに焦点を当てている。鉄の骨組みとガラスでできた屋根の独特の質量感がダイナミックに表現されている。(1877年 カンバスに油彩 75.5×104㎝ パリ、オルセー美術館)




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