壺齋散人の 美術批評
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ユダヤの花嫁:レンブラント




「ユダヤの花嫁」と呼ばれるこの絵は、レンブラント最晩年の作品だ。モデルの二人が誰をあらわしているのか、長らく議論があったが、今日ではイサクとリベカだとするのが通説だ。イサクはアブラハムの長子で、ユダヤ人の祖先とされる人だ。そのイサクがリベカと結ばれるところを描いたということだ。

実際のモデルはティトゥスとその妻マグダレーナではないかという説もある。もしそうなら、かれらが結婚したのは1668年、レンブラントの死の前年であるから、この絵が描かれたのもその頃ということになる。レンブラントは、1663年にヘンドリッキエがなくなった後、もっぱらティトゥスの世話になっていた。

二人は身を寄せ合っているが、不思議なことにそれぞれ異なった方角を見ている。この絵のためのデッサンは、男が女を見つめている構図なので、思うところがあって、このように異なった方向を見るようにさせたのか。しかし、男は左手で女の肩を抱き、右手で女の胸のあたりを触っている。その手を女が右手で支えているのは、男の愛を受け入れた証拠だと思われる。

全体的に見て、静謐な雰囲気が伝わって来る作品だ。

(1668年頃 カンバスに油彩 121.5×166.5㎝ アムステルダム、国立美術館)




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