壺齋散人の 美術批評 |
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小さいルイ(Petit Louis):ルオーの世界 |
1948年から1952年にかけて、最晩年のルオーは「うらびれた旅のサーカス」という副題のもとで多数の絵を描いた。この「小さいルイ(Petit Louis)」もその一点である。ルイという名の道化を描いたのだと思われる。「小さい」というのは、まだ成年になっていないという意味なのか、それとも身体が小さいという意味なのか、詳しいことはわからない。単なる愛称かもしれない。 ルイは、顔を正面に向けながら、目は左前方のほうへ向けている。その方向に、気を引くものがあるのだろう。この何気ない仕草があるために、絵に動きが生まれ、全体が躍動感あふれた作品に仕上がっている。 構図の単純さに比べると、色彩は非常に豊かだ。あふれるような色彩というのは、こういうのを言うのだろう。黄色をベースにして、赤でポイントをつけ、白をハイライトのように使っている。特に赤の使い方は絶妙だ。この赤が利いて、絵全体に祝祭的な雰囲気が生まれている。 黒く塗りつぶされた大きな瞳、馬のように長い鼻、そしてやや開き気味の小さな口の組み合わせは、ルオーの人物に共通した特徴だ。 (1952年 カンヴァスに油彩 38.5×24.5㎝ パリ、個人コレクション) |
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