壺齋散人の 美術批評 |
HOME|ブログ本館|東京を描く|水彩画|ブレイク詩集|フランス文学|西洋哲学|プロフィール|BBS |
グランド・ジャット辺のセーヌ川:スーラの点描画 |
1887年の夏、スーラは北フランスの海岸には行かず、パリ周辺でスケッチを楽しんだ。「グランド・ジャット辺のセーヌ川」と題するこの絵は、その成果の一つだ。グランド・ジャット島のあたりを流れるセーヌ川をモチーフにしている。 中央部に黄色い帯状に見えるのが、グランド・ジャット島だと思われる。その手前の岸はクリシーのあたりだろう。セーヌの流れが右へ向かっているところから、手前が右岸だとわかるからだ。その流れにまかせて、ヨットやカヌーが下ってゆく。カヌーには一人の若者が乗りこんで櫂をこぐ仕草をしている。 水面も緑の葉も、非常に温和な感じをさせるが、それは点描のコントロールの効果だ。この頃になると、スーラの点描法は多くの賛同者を獲得し、スーラは新しい時代のチャンピオンとしての名声を確立しつつあった。その評価は、スーラの主知主義的な姿勢をたたえるものだった。スーラの賛美者たちは、印象派の老人たちが直感で描くところを、理知の目を通して描くと言って高く評価した。 実際スーラは、当時流行の色彩分析化学の書物を読んだりして、科学的な絵画の実践に意気込みを感じていたのである。 (1887年 カンバスに油彩 65.0×81.0㎝ ベルギー王立美術館) |
|
HOME | スーラ | 次へ |
作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2011-2018 このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである |