壺齋散人の 美術批評
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白いドレスのマルガリータ王女:ベラスケスの世界




フェリペ四世の妃となったマリアナは、1651年の7月に16歳で女の子を産んだ。マルガリータ王女である。マルガリータは生まれながらに、母の実家オーストリアのハプスブルグ家の皇帝レオポルドに嫁がされることになっていた。そのハプスブルグ家への成長報告として、彼女の肖像画が多く作られた。

「白いドレスのマルガリータ王女」と題されたこの絵は、マルガリータが五歳の時の肖像画である。これに先立ち、三歳の時には「ピンクのマルガリータ王女」を描いているが、それに比べると、こちらはやや大人びた表情に見える。目元に特徴があり、そこには不安を感じさせるような影が指摘できる。この女性は22歳で若死にしているのだが、その若死にとこの絵に窺われる不安のようなものは、どこかでつながっているのだろうか。

ベラスケスのほかに、オーストリアからわざわざ派遣された画家も彼女の肖像画を描いている。それらを見比べると、まるで別人を描いたように異なった相貌に見えるという。

構図的には非常に安定感がある。背景に暖色を用いているが、衣装の色も暖かさを感じさせ、しかも明暗対比がきいているので、人物は浮き上がって見える。

(1654年頃 カンバスに油彩 105×88㎝ ウィーン、美術史美術館)




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