壺齋散人の 美術批評
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ローゼンクランツ祝祭画:デューラーの油彩板絵




デューラーは1505年の秋から翌年にかけて二回目のイタリア旅行をするが、それが契機となって一段の進歩を遂げた。それまでは主として版画家として名声を確立していたデューラーが、これ以後は偉大な油彩画家として、世界的な名声を確立するのである。

イタリア旅行中に描かれた作品の中で最も重要なのは「ローゼンクランツ(バラの冠)祝祭画」である。ヘラ―祭壇画と並んでデューラーの最高傑作に数えられているが、残念なことに、度々損傷を蒙り、そのたびに凡庸な画家が上塗りを重ねてきた結果、原作のイメージとはだいぶかけ離れているとされる。それでも完全に消失してしまったヘラ―祭壇画に比べれば、現存していることがラッキーであるといえなくもない。

題名にあるとおり、この絵のテーマは聖母子にバラの冠が被せられることにある。これは、ドメニコ修道会が15世紀以来ドイツに流行させたロザリオ崇拝の祭式と関連しているとされる。その祭式の模様を、デューラーは画面の上に再現したわけである。

中央に聖母マリアとキリストが位置し、その周りをキリスト教会のすべての階層の人々が取り囲んで儀式を見ている。聖母の両側に膝まづいているのは、教皇ジュリオ二世と皇帝マクシミリアン一世。聖母の膝下では天子がリュートを弾き、聖母の頭部の両側には二人の天使が浮かんで、いままさに聖母に冠をかぶせようとしている。その上空ではさらに二人の天使が、聖なる帳を掲げながら戴冠の様子を見ている。なお、右端の木の下に立っている二人の男性のうち左側の人は、デューラー本人の自画像とされている。表情をよく見ると、たしかにデューラーの顔だ。

画面からは、まさに宗教的な厳粛さがひしひしと伝わってくるような迫力が感じられる。それはイメージの豊かさからもたらされる豊穣さのほかに、色彩の豊かさにも起因するといえる。大部分は後世の凡庸な画家によって描きなおされているとはいえ、中にはデューラーの直筆がそのまま残っている部分もあり、たとえば教皇のマントや木立など補筆されていない部分の色彩など、デューラー独自の美しさを感じさせる。

(1506年、板に油彩、162×194.5cm、プラハ国立美術館)





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