壺齋散人の 美術批評 |
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ヘラー祭壇画:デューラーの失われた傑作 |
「ヘラー祭壇画」は、「ローゼンクランツ祝祭画」、「一万人のキリスト者の殉教」に続く、三作目の祭壇画である。デューラー自身、これを自分にとっては渾身の作だといい、「この板絵は500年間きれいで新鮮なままだろう」と書簡の中で誇っているくらいだが、残念なことに1729年(完成後220年後)、ミュンヘンの宮殿火災で焼失した。しかし、ヨープスト・ハリッヒによる模写(1624年作)が残っているので、どのような絵だったかは、偲ぶことが出来る。 この祭壇画は、フランクフルトの富豪ヤーコプ・ヘラーの依頼によって作られた。ヘラーは、自分の墓地がある聖ドメニコ修道会の寺院の祭壇を飾るものとして、三幅展開式の祭壇画をデューラーに依頼したのであった。それにもとづいてデューラーは、中央画面を挿んで左右にそれぞれ4枚ずつの画面を展開する多翼祭壇画とした。そして中央画面を自分自身が描き、両翼を弟子たちにゆだねた。 デューラー自身が描いた中央画面は、「マリアの昇天と戴冠」と題されている。画面は上部と下部に二分され、上部では昇天したマリアが戴冠される場面が、下部ではそれを見守る聖徒たちが描かれている。弟子たちが描いた両翼の画面には、聖徒たちの殉教の場面の外に、ヘラー夫妻の肖像画も含まれている。 ハリッヒによる模写のほかに、デューラー自身の手になる下絵のためのスケッチが18枚残されている。それらは細部に至るまで極めて克明に描かれているので、ハリッヒの模写ではわからない点までも明らかにすることができる。 (1509年、板に油彩、中央部分189×138cm、フランクフルト歴史美術館) |
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