壺齋散人の 美術批評
HOME ブログ本館 | 東京を描く 水彩画 日本の美術 プロフィール 掲示板


独立百年祭:アンリ・ルソーの世界




1892年は、フランス革命を経て共和国宣言が出されてからちょうど百年目にあたり、フランス各地で祝祭が催された。パリにおけるその祝祭の様子を描いたのが「独立百年祭」と題したこの作品だ。同年のアンデパンダン展に出展された。

広場で人々が踊っているのはカルマニョル踊り。フランス革命の際に踊られたというもので、人びとはその踊りを「ラ・マルセイエーズ」の音楽に合わせて踊ったと言う。この絵からはその熱気が伝わって来るようである。

ルソーはお祭り好きだったようだが、この絵にはもう一つ、ルソーの共和主義者としての心情も込められている。じっさいかれは共和主義思想に心酔する一方、フリーメーソンにも加入していた。ルソーの作品に政治的なメッセージを感じることはあまりないようにも思われるのだが、かれはほかに「戦争」をモチーフにした絵も描いており、けっこう政治にコミットしていたようだ。

なおルソーは、この絵とほぼ同趣向の作品を、パニョレ市役所の壁画コンクールに応募したが、そちらは落選して、日の目をみることはなかった。

(1892年 カンバスに油彩 111.8×158.1㎝ 個人蔵)




HOME アンリ・ルソー次へ









作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2011-2021
このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである