壺齋散人の美術批評
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ホテルのロビー:ホッパーの世界




ホッパーは妻のジョーと二人でアメリカじゅうをスケッチ旅行し、ホテルやモテるによくとまった。その際にホテルの様子をモチーフにした作品を作った。「ホテルのロビー(Hotel Lobby)」と題するこの作品はその一つ。安っぽいホテルのロビーでの様子がスナップショットふうに描かれている。

フロントの周囲に三人の人物がいる。手前の女性は一人旅なのだろうか、ソファに腰かけ雑誌のようなものを読んでいる。奥の年老いたカップルは何やら言葉を交わしている。このカップルはホッパーと妻ジョーをモデルにしたということだ。この時ホッパーは60歳を超えたばかりだったが、画面で見るかぎり、それよりも老けて見える。

フロントの奥のデスクの背後には、従業員が座っているのだが、影に隠れて、よく見ないとわからない。

全体として、暗い沈滞したイメージの作品である。その暗さを強調するかのように、寒色主体の色つかいになっている。老女の赤いドレスが、ハイライトの効果を発揮している。

(1943年 カンバスに油彩 81.9×103.5㎝ インディアナポリス美術館)



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