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ラファエロ・サンティ1:ルネサンス美術




ラファエロ・サンティは、日本では単にラファエロとして知られる。ダ・ヴィンチ、ミケランジェロと並び、ルネサンスの三代巨匠と呼ばれる。この三人のうちでは、ラファエロが一番若かったので、彼にはダ・ヴィンチやミケランジェロの影響を指摘できる。しかし、ラファエロにはラファエロの魅力があり、それは優美さと典雅さといってよい。

父親はウルビーノの宮廷画家だった。しかしラファエロが11歳の時に死んだので、ラファエロが父親から体系的な指導を受けていたかわからない。彼が17歳の時に、フィレンツェの画家ペルジーノの下で仕事をしていたことがわかっている。早熟な画家で、18歳の時には自立している。初期の彼の作風にはペルジーノの強い影響を指摘できるという。

自立した後のラファエロは、フィレンツェを主な拠点にして画家としての活動をした。その頃、1500年から1506年にかけて、ダ・ヴィンチがフィレンツェにいたので、ラファエロはダ・ヴィンチの作風を自分の絵画に取り入れた。1506年頃の二つの聖母像には、ダ・ヴィンチの影響が色濃く出ている。

上はそのうちの一つ、「牧場の聖母」。聖母マリアの顔を頂点とした三角画法は、ダ・ヴィンチの「岩窟の聖母」の構図に共通するものである。幼子のイエスは、聖母マリアの手に支えられながら立ち、右手で杖を握っている。その杖の下のほうを、これも幼子のヨハネが握っている。ヨハネは簡単な布をまとい、ひざまづいているが、これはキリストへの敬意を表現したもの。背後に牧場がひろがり、そのことから「牧場の聖母」と呼ばれるようになった。(1506年 板に油彩 113×88㎝ ウィーン、美術史美術館)



これは、「カーネーションの聖母」。「牧場の聖母」とほぼ同じ頃に描かれた作品。「牧場」が屋外でののびやかな雰囲気を感じさせるのに対して、この絵は、室内の様子を描いており、両手でカーネーションの花を持った聖母が幼子キリストをあやしている構図は、ダ・ヴィンチの「ブノアの聖母」と共通している。(1506-07年 板に油彩 27.9×22.4㎝ ロンドン、ナショナル・ギャラリー)



これは、「小椅子の聖母」。ラファエロは、1508年にローマに移動して以来、1520年に死ぬまでローマで活躍した。その当時の主な仕事は、ヴァティカン宮殿におけるフレスコ画群の制作であったが、その合間を縫うようにして、他の作品も手掛けた。この「小椅子の聖母」は、上の二作と比べると、かなりな相違を見て取れる。陰影が深まり、また暖色が効果的に配置されて、画面全体にドラマティックな雰囲気が生まれている。(1514年頃 板に油彩 71×71㎝ フィレンツェ、パラティーナ美術館)


これは、「キリストの変容」。ラファエロの遺作となった作品。バロックの先駆けを感じさせる。もともとナルボンヌ大聖堂の祭壇画として依頼されたものだが、ラファエロの死により未完成に終わり、いまではヴァティカンに所蔵されている。(1517-1520年未完成 板に油彩 410×279㎝ ヴァティカン美術館)





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