壺齋散人の美術批評 |
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ガルガンチュア:ドーミエの風刺版画 |
1830年代のフランスは、ジャーナリズムが勃興した時代だった。新聞雑誌があいついで発行され、その紙面を石版画が埋めた。写真技術がまだなかった当時にあって、大衆向けの表現手段としては、石版画がもっとも便利だったのである。この時代、多くの石版画家が活躍したが、ドーミエはその中心的な人物であった。 1830年代のフランスは、1830年の七月革命で権力を握ったルイ・フィリップの時代であり、かれの背後にはブルジョワジーがついていた。ブルジョワジーは、ルイ・フィリップを巧妙にあやつることで、自己の権益を追求した。そんなことから、1830年代のフランスは、ブルジョワの時代ともいわれる。 「ガルガンチュア」と題するこの石版画は、1831年12月に、一枚刷りの大版石版画として刊行された。ガルガンチュアは、ラブレーの滑稽文学の有名なキャラクターだが、それにルイ・フィリップを重ね合わせたこの絵は、ルイ・フィリップへの強烈な風刺として世間の評判になった。 この絵の中のガルガンチュアは、ルイ・フィリップのトレードマークというべき梨頭をしている。その頭を昂然とあげながら、巨大な口から長い板をさしのばし、人民からの貢納金を飲み込んでいる。 これはルイ・フィリップの体現する当時のフランス政府の金権体質を皮肉ったものである。 (1831年12月 大版石版画 21.4×30.5㎝) |
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