壺齋散人の美術批評 |
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七月の英雄:ドーミエの風刺版画 |
1930年の七月革命は、大衆の蜂起によって成功したのだったが、革命がもたらしたのはルイ・フィリップによる王政でり、かれを担いだブルジョワジーの勝利であった。その一方、革命を成功させた大衆は、見向きもされなかった。「七月の英雄(Un Héros de Juillet)」と題したこの版画は、そうした無視された大衆を象徴する人物像である。 1831年5月に「カリカチュール」紙上で発表された。「カリカチュール」は、その名のとおり風刺を売り物にした新聞である。だからこの石版画も風刺が目的であろう。その風刺は、革命の英雄が自殺せざるをえないほど追い詰められているということで、革命の恩恵を受けたルイ・フィリップへのあてつけである。 かつての英雄が、セーヌ川の欄干の上から身を投げようとしている。この男に左足が欠けているのは、革命での闘いのためである。その男が、重石をつけてるのは、確実に水に沈むためであろう。 (1831年5月 リトグラフ 29.5×23.2㎝) |
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